物乞いストリートの戦い

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老人がそう言い放った直後、千兵の右肩に何か重いものが乗った。 リリィの頭だった。 「リ!」 「ぬぁ!千兵、近くで叫ぶのは勘弁~」  大丈夫じゃないか。 千兵がそう思っていると、リリィの顔が千兵の方を向く。 「千兵、でもさ、なんでひるまなのにほしがきれいにでてるんだろね……うっぷ」  大丈夫じゃないじゃないか。 千兵はリリィの顔を見て、言葉を聞いた瞬間思った。 リリィはひどく目を回したらしい。 視線はどこか遠くを視るようで、瞳の部分が左右を行ったり来たりしている。 口からは、女性が公に吐いてはいけないものが危うく出そうになっている。 何より顔色がかなり悪くなっていた。本当に目を回しただけなのか疑いたくなるほど顔が青ざめていた。 「千兵、ちょっといまだけ話しかけないで……うっぷ。しじょうさいこうにきもちわる……おえっぷ」 しかし千兵はリリィの身を案じるよりも、あることを恐れていた。
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