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「おい!アレ、ヤバいんじゃないか?」
千兵が振り向くと、まさに千兵が恐れていた事態が起こりそうになっていた。
リリィが呼び寄せた人型空気球が、ぐにゃぐにゃと形を少しずつ歪ませていた。
右腕部分が異常に膨らんだり、
左腕部分が異常に縮んだり、
右足部分が異常に縮んだり、
左足部分が異常に伸びたり、
胴部分が波打ったり、
頭部分が潰れたり、
めまぐるしく変化しながらも千兵達の元へ近寄って来る。
「どーなってんだアレ……」
物乞い達が困惑する一方で、千兵は――
「あれ~?千兵どこ行った~。ね~千へ……うぶぇ!」
千兵はリリィの耳を手で覆い、同時に自分の耳を肘で塞ぐ。
その状態で、うずくまるように伏せた。
もちろん千兵はリリィの事を考慮せず、むしろ焦っているような、咄嗟の行動のようである。
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