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その直後、突然人型空気球全体が二倍ほどに膨らみ、それと同時に空気球はこちら側へ近寄ってくるのをやめた。
「お……おい!爆発するんじゃねぇかこれ!?」
「皆!逃げろ!どこでもいいから!」
物乞いの誰かがそう言ったのを皮切りに空気球の周りにいた物乞い達は走って空気球から逃げ始める……
*
空気球に背を向け、各々の方向に走る物乞い達。
その中に一人、立ち止まって空気球と千兵をぼんやりと眺める物乞いがいた。
他の物乞い達が困惑し、恐怖して逃走するなか、その物乞いは一人沈黙し思考する。
どうして、あの子は伏せたまま動かないんだ?
空気球があんなに近いのに……
それに、耳を塞いでるのも何故なんだ?
状況と憶測から、その物乞いは直ぐにやるべき行動を悟った。
同時に大きく膨らんでいた空気球は、瞬く間に目に見えない大きさに縮む。
*
「皆!伏せ――――」
唯一立ち止まっていた物乞いの叫び声は、とてつもなく大きな爆発音により最後まで聞き取る事が出来なかった。
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