秘密と修行と解体新書

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窓から注がれているのであろう暖かい日差し。 ほんのりと人肌の温もりを保つ毛布と布団。 小気味良く響く鳥の囀り。 優しく香る木の匂い。 ぼんやりと目を覚ました千兵はベッドで寝た姿勢のまま薄目で部屋を眺める。 まず、視界に入るものはほぼ全て木目調であった。 テーブルに椅子、観音開きの大きいクローゼット、ドアまでもが木製なのであろう。 クローゼットには見慣れたリュックサック。その横にはいつも腰に提げている鞘入りの段平が、鞘を提げるためのベルトを付けたまま立て掛けてある。 千兵は寝返りを打ち仰向けの姿勢になった。 木の丸太をそのまま使った梁が露出した、素朴な造りの天井。 飾る様子は一切無く、かえって小綺麗な印象を受ける。 千兵は開きかけていた重い瞼を再び閉じ、昨日の事を思い返した。
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