秘密と修行と解体新書

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「あぁいやいや、それに関しちゃこっちが悪かったよ。武族の男の子が来たっていうから、実け……じゃなくてえっと、ボディーガードが!ボディーガードが、その、あ、暴れちゃって、……ね?」 小さな物乞いは少し早口になりつつそう言った。 「……でも、怪我人たくさん出しちゃったし――」 「心配すんな、お嬢ちゃん」 リリィの声に割って入るようにしゃがれた声が後ろから聞こえた。 リリィが振り向くと、その声の主が――見当たらない。 「ここじゃ、ここ」 すぐ足元で倒れている物乞いこそが、声の主――老人の物乞いであった。 「こいつらは皆、儂の軍隊でちょいと特別に鍛えたモンでの、普通の人間より頑丈なんじゃ。今は倒れて気を失っとるが、これしきの事で大怪我するようには鍛えとらん」 老人はゆっくり立ち上がりながら言う。 わざとらしく周りを見渡すと、それに一言呟いた。 「一人を除いて、な」
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