秘密と修行と解体新書

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「一人?」 リリィが聞き返したが、 「ん?……ああ、何でもない。何でもないぞい」 あっさり流された。 「……さ!立ち話もなんだから、街に入って休んでいきなよ。疲れたでしょ?」 「あ、はい。全くその通りで。でも……」 「でも、何?」 小さな物乞いが訪ねると、千兵はリュックサック――戦闘中にずっと地面に放っておいたので所々踏まれた痕がある――から黒い小さな革袋を出す。 申し訳なさそうな顔をして千兵は袋の口を開け、それを下に向ける。 「無一文……なのね」 空の革袋を持つ千兵を見て小さな物乞いは呟いた。 が、 「……大丈夫!ビンボーな旅人さんにお金は払わせませんから、安心して!」 その直後に嬉々とした表情を見せる。
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