秘密と修行と解体新書

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* 林の中は、お世辞にも清潔感がある空間とは言えなかった。 廃車や壊れた電化製品が道の両脇に無造作に捨てられてある。 悪臭こそ無いものの、ごたごたとした景色が好きではない千兵は眉間に皺を寄せ険しい表情で道を歩く。 「もしかして、治安が悪い国なのかな?外はそんなにボロそうじゃなかったのに」 「そ」 「そ?……ってゆーか君、喋れないんだね」 小さな物乞いが振り向いて、千兵に訊く。 「あー……」 「喋れないというか、喋ってるつもりなんです。言いたいことの初めの一文字しか言えてないんですけどね」 千兵はめんどくさそうな顔で、 リリィは笑顔で、千兵の頬を人差し指で突きながら説明した。 「む~……」 「もしかして千兵ってば、不貞腐れてんの?」 そう言ってリリィは更に何度も千兵の頬を突っつく。 千兵はめんどくさそうだったが、しかし抵抗するほど嫌でもなさそうだった。
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