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「わざと寝返りしたでしょ、千兵!」
千兵は無言のまま起き上がり、ベッドの反対側にあるドアへ向く。
「しぶとく起きない千兵が悪いんだからねっ!」
すぐ足元に白い革製のスリッパがあることに気づくと、千兵は素足のままそれを履く。
パタ、パタ、と独特の足音をたてながら、千兵はドアへと一歩一歩歩み寄る。
「えっと……怒ってる?」
千兵は終始無言と無表情を貫き通した。
しかしドアの正面に立ち、ドアノブに手をかけようとした瞬間だった。
ドアに付いている磨りガラス越しに、何か人影が勢いよく近づいてくるのが見えた。
もっとも、千兵がそれに気づいて身構えようとした時にはもう遅かったのだが。
「おっはよーございまーす!」
明るく若々しい少女の声と共に、押引式のドアが外側から勢いよく開けられる。
このドアだが、部屋の内側に扉が開かれるような作りとなっているが故に、
ゴズンッ
「うッ!」
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