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「どうかなさいましたか?」
すかさず男は訊ねた。
青年は男に応えることなく、傍らに置いておいた自分のリュックサックからスケッチブックとマジックペンを取り出す。
スケッチブックの適当なページを開くと、マジックペンのキャップを開け、小気味良い摩擦音をたてながらペンをスケッチブックの上で滑らせていく。
その所作はさながら機械的で、特に感情を込めていないような印象を男は受けた。
「?」
突然の行動に男が戸惑っていると、
「ん……」
青年は、男に向かって書いた内容を見せた。
スケッチブックには黒く綺麗な字でこう書いてあった。
『二人入国希望』
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