小隊長殿![月下の二人]です

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  「あ。そうそう。 バルゲニアに行った他の隊員が 面白い物を見つけたんだよ。」 バルゲニアとは、 ここマトン・ラードの基地 近くにある商業都市 戦争によって栄えた町だ 休暇を貰った兵達は バルゲニアで それぞれの好みの方法で 心身を癒すのである。 「お前の『面白い』は 当てにならねぇ。」 エリクソンが面白いと言うのは 『どれだけ人をイライラさせるか』 と言う所に集約される この二人はそれを嫌と言う程 味わわされている。 だからこそ エリクソンが何かを言い出す前に 先手を打とうとしたのだが… 「いや、ある意味大問題。」 本当に問題が起きている とは思えない程 あっけらかんと言っているが その瞳は真剣そのものだ。 基本的にエリクソンは 薄い笑みを浮かべていて、 真面目なんだか不真面目なんだか 解らない態度だが 今回は本気で問題があったようだ。 「どういう事だ。」 背中の草や土を払い、 その瞳に戦士の光を宿しながら 立ち上がるグェンデル アンバラックの目も 戦闘直前のような冷静さを出し、 可愛いらしくさえあった三編みが 戦士の気迫と相俟って 凶悪な物に見える。 そんな二人を前にして 隊長であるエリクソンは…… 「お願い…そこまで気迫を 出されると言い出し難いです…。」 とことん弱気に出ていた。 『ズコッ』 という効果音が欲しいくらいの 勢いで二人がコケる。 確かに一歩間違えればすぐにでも 剣を抜きそうな雰囲気の二人に 囲まれては居心地は悪かろう しかし、二人の上の立場である 隊長の言う台詞ではない そう思うのが普通だが、 それが通じないのがエリクソンである。 「ま、まぁ… 事の内容を先に教えて貰おう。」 肩透かしを食って脱力したまま アンバラックが先を促す グェンデルは今にも噛み付きそうな そんな目で睨み付けている。 「その前に曹長に お願いがあるんだけど。」 「は? いきなりなんだ?」 「今から見せるのは、 他の隊員が私に持って来た物で 私が関わっている訳じゃないからね。 良いかい? ある意味では私も被害者なんだよ。」 「はぁ? どういうこった?」  
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