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「貴女、役職は?」
幻想郷でない、どこかに所属するらしい繊月に役職を聞く。
閻魔であれば階級が、そうでなければ高名な妖怪か、はたまた輪廻の最終地点に辿り着いた霊魂なのか、そこを詳しくする為に紫は問うたのだ。
「ん~、わたしは管理職なのさ~」
紫の質問の意図をくみ取ったのか余りにもぼかした言い方でその質問を回避しようとする繊月、そこまで言いたくないのだろうか。
「管理職って、貴女ねぇ・・・、この幻想郷にはあまり危険な存在は入れないようにしてるのよ、でも今回は例外だからしっかりと名乗ってほしいわ」
そう、今回幻想郷に辿り着いた繊月は例外中の例外、本来なら現実世界で忘れ去られてモノ達がこの場所に流れ着くか、幻想郷全体を囲んでいる結界を実力で無理やり抉じ開けて侵入する、または、紫が気まぐれに行う神隠しに巻き込まれて幻想郷に連れてこられるかの三つの選択肢があるのだが、繊月はその方法の斜め上を使ってきたのであるからこういった問答になるのは当然でもある。
釣りあげられた、と言ってしまえば被害者なのだが、繊月本人が幻想郷に居たいと言うのであれば、どんなに安全そうな、いわば無害な存在かを考えなければならないのが幻想郷の管理人の悩みでもあるのだろうか。
繊月が渋るのも分かるが管理しなければならない紫の立場と言う物もある。
郷に入っては郷に従え、と言う言葉が繊月の頭に浮かび、仕方がないといった風に口を開いた。
「わたしは、言うなれば神様なのさ~、土着神とかじゃなくて管理職だからそこら辺に居る神様の統括管理職さ~」
これまた濁した言い方をする繊月、余りにもかたくなだが、ここ、マヨヒガにいるのは妖怪の賢者である。
繊月の渋る言い方からそこからどんな人物かを仮説をたてて一番確率の高い、それでいて一番合ってほしくない役職名をはじき出す。
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