マヨヒガの神様

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その声に驚いたのか、座っていた猫耳少女、橙は飛びあがらんばかりに驚いていた。 その振動でか、寝ていた少女が完全に覚醒したのかはいざ知れず、のっそりと寝かされていた布団から這い出て、目の前にいた橙をジッと見始めたのだ。 「ん、こんなところに美味しそうな猫が・・・・・・」 寝ぼけているのか、空腹なのか、はたまたその両方か、どちらでもいいが起き上がった少女は口をあけて橙の耳の部分に噛みついたのだ、それもがっちりと。 「んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっぁぁぁああ!!!!」 橙の悲痛な叫びがマヨヒガ全体に響き渡った。 周りに何の家もないのが唯一の救いである、と言いきれるほどの大音量で叫んだのだ。 当然、橙の主である藍は何事かと吹っ飛んで来る。 九つの尻尾を振りながらも。 「ちぇえええぇぇぇええぇぇん、大丈夫かぁぁあぁ!?」 この使い魔あって、この主人あり、両方とも声が大きいのなんの、びりびりと部屋全体を一時振動させるに至ったのだから、そのすごさが分かるだろう。 「らんしゃ~、耳が、耳から食べられてますぅ~」 そんな二人の行動など露知らず、その噛みついている少女は意に介した風もなくそのままもそもそと噛みついている位置をずらしてゆく。 「ん、この猫・・・頭にキャベツが乗ってるのさ~、いただきまー・・・」 次は橙の帽子に噛みついたその少女、当然紐も何も付いていない帽子な為キャベツのように見える帽子はその少女の口に噛みつかれて、橙から離れた、結果オーライである。 「大丈夫か橙?」 「だいじょうぶですっ藍様」 藍は橙の無事を確認するとぎゅっと抱きしめた後、藍と橙の横に特徴的な目玉が大量に蠢いているスキマからぬっと、マヨヒガの主たる紫が遅れて登場した。  
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