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若き隋楠(ズイナン)王と斗玻(ドゥーバ)の王女の婚礼の式。
それまでに城へたどり着かなくてはならない。
男は息を吐き、枯れ木が散らばる森を走った。
薄布は汗で体にまとまりつき、履きなれない窮屈な靴も手伝ってか、中々たどり着かない。
「早く!行かなくては!」
ここでたどり着かなかったら全ては終わりだ。
──嫌だ。死なせはしない!
男──アーリーは駆けた。
「万歳!万歳!」
人々の歓声で溢れた祭壇の外。若き王と王妃になった女王はにこやかに民に手を振っている。
「あれが王妃ですか」
凛とした顔つきは勇ましい女の印象を与える。しかし、柔らかく笑えば美しい花のよう。
アーリーは遠目から王妃を眺めた。
「アーリー、ここにいたのか」
すると、後ろから見知った声が聞こえた。異国の武人──朧宇利(オボロ ウリ)だ。女のように髪を上部で結んだ奇妙な結び方はいつ見ても興味深い。
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