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「うわぁぁー……っ」
絶叫と共に、布団を退かして跳び起きる。
額や衣には、べっとりと脂汗。
肺腑を宵の風で満たして一度全て吐き出せば、いくらか気分も落ち着く。
男は傍に置いた手ぬぐいで汗を拭うと布団を畳んで、障子を開けて外へ出た。
虫たちの声、梟の柔らかな歌。木々のざわめき。
耳の中で混じり溶け合うそれらもまた、気分を少しは落ち着けてくれる。
漆黒の空にぽっかりと浮かぶ月明かりを頼りに、宵の道を歩いた。
井戸で水を汲み上げ、手に口、顔と、体を清めていく。
気分が完全に落ち着いてしまわぬうちに――夢の残像がその瞳に焼き付くうちに、作業に取り掛からなければならぬ。
男は立ったまま木に寄りかかり、そっと目を閉じる。
そしてこれから掘るものを、静かに思い浮かべた。
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