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薄暗い、裏路地だった。
広がる血溜まりの中に女性が倒れている。胸に大きな裂傷、明らかに致命傷だった。
その傍らに、男が立っている。その手には日本刀が握られていた。たった今、女性を斬った刀だ。
男はもう動かない女性の胸に、刀を刺した。
感触に満足し、刀を抜く。
また刺す。
抜く。
刺す。
抜く。
刺す。
抜く。
何度繰り返したのか、男には分からない。
「すいません、お尋ねしたいのですが。」
少年が、そこに立っていた。黒いコートを羽織り、黒い帽子を深く被っている。僅かに見える口元から、その白い肌が分かる。
その手に握られている、細長い物が、白い布に覆われていた。
「・・・探し物をしてるんですが。」
男が刀を構える。しかし少年は悠然と、言葉を続ける。
「まだ後があるので、手短に済ませたいんですよ。優しく言っている内に・・・」
刀が振り降ろされる。確かな殺意を孕んだ一撃は、
当たらなかった。
返す刀。
それもまた当たらない。
まるで喜劇。
「・・・無様だな。」
少年は大きく後ろに下がる。
「貴様はつまらない。早々に終わらせる。」
白い布を剥ぐ。そこから現れたのは、鞘に収まったままの、野太刀だった。
「妖刀、捕まえる。」
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