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「僕ばっかり喋っているね、何か話してくれないかな?」
「あっ・・・その、アナタは誰ですか?学校の先生ではないと思いましたけど。」
「あぁ、僕達は初対面だったね。初対面なら挨拶が、自己紹介が必要だ。ウッカリしていたよ。
僕の事は『スピア』でいいよ。本名は明かせない立場なんだよ。もっとも、僕は『スピア』と言う称号が気に入っているけどね。
それで、君の名前は教えてくれないのかな?こちらが名乗った以上、教えてくれてもいいと思うよ?」
「あっ、北川琴葉です。
それで、スピアさん。何で夜の学校にいるんですか?散歩コースには向きませんよ?」
「あぁ、少し探し物をしているんだ。とても素晴らしい物らしいのだけど、知らないかな?」
「探し物、ですか?」
「それはね、楔なんだ。この土地に眠る素晴らしい何かを縛る物なんだ。僕はそれを懸命に探しているんだよ。」
何を言っているのか分からない。だけど一つだけ分かる事がある。
この人は、魔術師だ。藤原くんの仲間かどうか分からないけど、一般人じゃない事は確かだ。
「私は、知らないです。」
「あぁ、大丈夫だよ。僕は探し方を知っているんだ。楔の探し方を知っているんだよ。楔は魂を吸い込む事で力を維持している。つまり、この近くにある魂は皆、楔に吸い寄せられるんだ。」
スピアさんの手に、何か握られている。私はそれを目で追って、気付いてしまった。
日本刀だ。それが高々と振り上げられている。
「さようなら、北川琴葉さん。」
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