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優side
額に、フツノの手が当てられている。僅かに感じる温かさ、幼い頃からずっと感じてきた。
「やはり、流れが乱れておる。おそらく一瞬でも無理に我の力を完全に使用した反動のようだな。」
「やれやれ、これではまだ使いこなしたとは言えないな。」
「主、元々我の力は人には過ぎたモノ。本来なら建御雷神の力を解放した状況で振るべき力だ。人には限定解除ですら危険な行為なのだぞ?」
フツノの心配はもっともだ。
いくら周囲から使いこなしていると言われてもそれは状況が整えば、それも振れて一度くらいが限度だろう。
「それでも、今回は仕方なくだ。他に手段は無かっただろう?」
「相も変わらず、甘い事だ。やはり主は魔術師としては変わっている。」
「・・・ならどうする?いい加減見限るか?」
試すような言い方、今まで何度も繰り返した、意味のない会話だ。
「我には今、主以外に我を振るう者はおらん。我が主は黒の魔術師だけだ。」
やっぱり、今回も同じ答えだった。
俺にとってフツノは家族だ。母親であり、姉であり、相棒でもある。
だからこうして、弱みも見せられる。
「主、明日も学校だ。今日はもう休むがよい。これ以上は体に障る。」
「あぁ・・・おやすみ。」
そうだ、カオスは言っていた。明日は学校をサボるな、と。
それはつまり学校に何かを施したという事だ。
ならば敢えて罠の中に飛び込んで、その企みを悉く砕いてやろう。
我は黒の魔術師。
絶望を食い尽くす、
安らぎの闇だ。
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