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琴葉side
注意深く周囲を見回し、用心しながら廊下を進んでいく。誰もいない。
目指すは優くんの教室、おそらく優くんも動き出していると思うけど、目的なく歩き回るよりはマシだろう。
(私には、戦えないしね。)
外と連絡が取れれば、ダリアさんを呼ぶ事も出来るだろうけど、携帯は使えない。
今の私には優くんと合流する以外に、生き延びる術はない。
(・・・ん?)
今、何かおかしな音を聞いた。
何というか、石に何かをこすりつけるような、耳障りな音だ。どこから・・・
大抵こういう展開だと、天井や壁に化け物が張り付いているとかそんな展開だ。いやいや、これは現在の出来事だ。まさかそんな・・・
淡い期待を込めて天井を見上げると・・・
こういう時は、予想って外れないよね♪
壁に刀を突き刺しながら、一人の男が私を睨んでいる。
男は刀にぶら下がり、まるで時代劇の忍者のようだった。しかしその目に理性は感じない。
ゆっくりと、男が降り立った。手に握られた刀が妖しく光っている。
あぁ、これは距離が近すぎる。
死んだかな?
「諦めるのは、カッコ悪いと思うよ?」
背後から、乾いた音が響いた。
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