第十幕 砕けぬ槍

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『グングニル』 北欧神話に登場する神、オーディンの携えた長槍。 決して外れず、 決して砕けず、 そして必ず主の手に戻る槍。 その威力は絶大で、同じく北欧神話に登場する竜殺しの剣、バルムンクすらも一撃で砕いてしまう。 ・・・こら作者。勝手に語るな。 【・・・てへ。】 無表情で言うなっ!! 最強の槍が迫る。北欧神話の神秘を再現した槍ならば、普通の人間には防ぐ事もかわす事も不可能だ。 ダリアさんの拳銃から、弾丸が放たれる。 連続する銃声。 息もつかせぬ連射。 その甲斐があったのか、グングニルの穂先が僅かにズレた。距離があれば、僅かなズレも重要だ。 ダリアさんの拳銃が、グングニルの必中の法則を砕いたのだ。 その結果に、私は勝利を確信する。 しかし次の瞬間に、私は見てしまった。 スピアの口元が喜悦に歪み、 ダリアさんの口元が驚愕に歪んだ。 一瞬だった。 ダリアさんの胸がグングニルに貫かれ、そのまま吹き飛んでしまった。 確かに見た。 穂先のズレたグングニルが、軌道を修正しながら加速して、次の瞬間には既に貫いていた。 まるで、喜劇。 貫くという結果を追い求めるように、グングニルは空間を走ったのだ。 「僕の作り上げたグングニルの必中、覆せると思ったのかな?」
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