第十幕 砕けぬ槍

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「おっ、あったあった♪折角なんだし、このグングニルは貰っていこう?」 ダリアさんは壁に突き刺さったグングニルを抜き、軽く振ってみる。その穂先は血に濡れていた。 やっぱり、さっきのは貫いていたんだ。 「ねぇ、結局どうやって助かったの?」 「えっ?だから変わり身の術だってば♪こう・・・シュシュッと。」 何故か手裏剣を投げるようなポーズ、忍者のつもりかな? 「でもこの血って・・・」 「リアリティ♪」 どうやら何がなんでも誤魔化すつもりのようだ。まぁタネを聞いても理解出来るかも分からないし、まぁいいか。 重要なのは、ダリアさんが生きてる事だ。 「さて、後はカオスを・・・」 「・・・ダリアさん?」 動きを止めたダリアさん。その理由は私にもすぐに分かった。 今までにない、圧倒的なまでの威圧感。まるで生きる全てに対する憎しみのようなそれに、思わず膝を折った。吐き気がする。 ダリアさんも感じているようで、表情は歪んでいる。 「マズい、かな?まさか楔は既に・・・」 よろけながらも、窓の外を見ていた。私も何とか立ち上がって、外を見る。 そこに、変なものが浮いていた。 例えるなら、不気味な月。 肉で出来た月だった。まるで鼓動のように蠢くそれは、見ているだけで不快だった。 「あれが・・・ヒルコ。」 呆然と、ダリアさんは呟いていた。
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