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マンションの一室で、優は立ち尽くしていた。
部屋には一通りの家具が揃っており、壁には近くの高校の制服が掛かっていた。
いたって普通の部屋。その真ん中で、優は考えていた。
(何でこうなった?)
「『霊地』?」
ダリアの言葉をそのまま反芻する。
霊地、何らかの要因で霊的現象が多発する土地を、魔術師達はこう呼んでいる。
「そう。あ、大丈夫だよ?ここは既に昔に封印を施されたから。ただ、通り魔事件は大抵が、封印となる楔の近くで起きてるの。」
「誰かが封印を解こうとしている、と?」
「多分ね。そこで、優には犯人を追うよりも、犯人の狙う場所を見張って欲しいの。」
「・・・分かった。」
状況を理解した上で、優は納得した。
仕事となれば、我が儘は通用しない。
「一応、住む場所に関しては心配しないで♪上から用意させたから♪」
こうして優は、ダリアから指定されたマンションの一室に来たが、そこに置かれた書類を見て、絶句した。
『転入届』
一緒に置かれた手紙には、ダリアの書いた文字で、
『どうせだから、高校に通って♪転入届出したし、制服と教科書も用意したから♪』
封印の楔のある場所、そこには現在・・・高校があった。
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