第十一幕 混沌

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カオスは窓の外に飛び出して、ヒルコに向かって飛翔する。 マズい、あんなのは操れるものじゃない。 「カオス、それは操れないっ!!それはただの力の塊にすぎないんだっ!!」 「操る?馬鹿を言うな。俺がヒルコを起こしたのは・・・」 それは、あまりにも嫌悪感溢れる出来事だった。 ヒルコから伸びた触手がカオスに向かい、そのまま食べたのだ。触手の先には口があった。 何と言うか、これはもう怪物だ。 『主、前だっ!!』 呆けている隙に、触手は俺さえも飲み込もうとする。けど甘い。 そのまま触手を斬って難を逃れる。 今までに人を斬って、その感触を嫌悪した事は何度もある。ただ、こいつの感触は、それより悪い。 「いっそ焼いて・・・流石にこれは大きいか。やっぱり・・・」 フツノを握る手に、力を込める。 布津御魂、神すらも斬る、刀の神。これならあいつも殺せる。 『主、それは身体が保たない。 分かっているのだろう?元々我を完全に解放するには、主の体はまだ未熟なのだ。』 「だけど、あれは無視出来ない。放置すればそれこそ世界の破滅だ。」 『だからこそ、今は別の手段を講じるべきなのだっ!!そもそも主は・・・』 俺達の会話は、そこで止まる。 俺の視線の先には、ヒルコを見上げる琴葉がいた。明らかに怯えている。 頭が真っ白になる。 守らないと。 琴葉を守らないと。 約束したのだからっ!! 体が悲鳴を上げる。 俺の体は 『藤原優』から 『建御雷神』へと 変貌する。
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