第十一幕 混沌

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襲いかかる肉の触手を、琴葉を抱えながら回避する。耳元に悲鳴が響くが、無視。 「式を編むは赤の力線、紡ぐ紋は縦横無尽・・・」 俺が得意とする熱の魔術、その中でも威力の高いのを広範囲に発動させる。一瞬で炭と化すが、すぐに新しい触手が向かってくる。 あれを焼き払うには核ミサイルが必要だ。 とにかく、琴葉を安全な場所に避難させないといけない。 結界は未だに持続している。どうやらカオスの力はまだ生きているようだ。だとすると、校舎の中しかないか・・・ 「優くん、後ろっ!!」 「知ってる。」 向かってくる触手を避け続けて・・・無事に玄関までたどり着いた。 「校舎の中にいろ、外よりは少しは安全だろう。」 「優くんは・・・どうするの?」 「あれを倒す。」 「無理だよっ!!だって、さっき負けたんだよっ!?何度やったって、あんなのになんて勝てないよっ!!」 知ってる。勝てないのは知ってる。でも、逃げる訳にはいかないんだ。 守ると約束した。必ず琴葉を守ると約束したんだ。約束は、果たす。 だからこそ・・・ 「大丈夫だ、琴葉。」 笑った。 琴葉が不安にならないように。 笑顔は伝染する。 琴葉が笑えるように。 俺は笑った。 「俺は大丈夫だから。ほら、早く逃げるんだ。」 「あっ・・・・・・優くんっ!!」 後ろから俺を狙う触手、それを避けられないと思ったのか、琴葉は俺の前に出て、そして・・・ ドスッ!! 串刺しになった、琴葉がいた。 「琴葉っ!!」 不用意に近付いた俺を、横殴りの衝撃が襲う。 そして俺は、再び意識を失った。
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