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襲いかかる肉の触手を、琴葉を抱えながら回避する。耳元に悲鳴が響くが、無視。
「式を編むは赤の力線、紡ぐ紋は縦横無尽・・・」
俺が得意とする熱の魔術、その中でも威力の高いのを広範囲に発動させる。一瞬で炭と化すが、すぐに新しい触手が向かってくる。
あれを焼き払うには核ミサイルが必要だ。
とにかく、琴葉を安全な場所に避難させないといけない。
結界は未だに持続している。どうやらカオスの力はまだ生きているようだ。だとすると、校舎の中しかないか・・・
「優くん、後ろっ!!」
「知ってる。」
向かってくる触手を避け続けて・・・無事に玄関までたどり着いた。
「校舎の中にいろ、外よりは少しは安全だろう。」
「優くんは・・・どうするの?」
「あれを倒す。」
「無理だよっ!!だって、さっき負けたんだよっ!?何度やったって、あんなのになんて勝てないよっ!!」
知ってる。勝てないのは知ってる。でも、逃げる訳にはいかないんだ。
守ると約束した。必ず琴葉を守ると約束したんだ。約束は、果たす。
だからこそ・・・
「大丈夫だ、琴葉。」
笑った。
琴葉が不安にならないように。
笑顔は伝染する。
琴葉が笑えるように。
俺は笑った。
「俺は大丈夫だから。ほら、早く逃げるんだ。」
「あっ・・・・・・優くんっ!!」
後ろから俺を狙う触手、それを避けられないと思ったのか、琴葉は俺の前に出て、そして・・・
ドスッ!!
串刺しになった、琴葉がいた。
「琴葉っ!!」
不用意に近付いた俺を、横殴りの衝撃が襲う。
そして俺は、再び意識を失った。
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