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やがて私達は、不思議な空間に出た。辺りには謎の球体が浮かんでいる。地面なんてない。私も浮かんでいるのだ。
「フツノさん、あの球って何?」
「ふむ、少し近付いてみよう。」
思うだけで、移動出来た。これは結構便利だ。癖になる。
「琴葉、試しに覗いてみよ。なに、命が取られる事はない。多分。」
「最後のそれ、凄く不安だよっ!?」
とは言え、何時までも放置する訳にもいかない。恐る恐る中を覗いて・・・
それはこの世に生を受けた日。
出逢い、別れていく人々。
手に入れた、最愛の人。
幸せな家庭。
やがて腐敗し崩れていく。
そして、悲惨な最後を迎える。
「フツノさん、これ・・・」
「うむ、どうやら今までこの街で死んだ人間の記憶であろう。魂の気配は感じない以上、ここにあるのは只の『記録』に過ぎぬがな。
ただ問題は、何故こんな物がここに大事に保管されているかであろう。」
そう言いながら、フツノさんは他の球体も調べている。何かを探しているようだ。
そんな中で、私はやけに気になる球体を、何となく覗いてみた。
そこには・・・
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