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「なるほど、なるほど。情が移ったか。」
カオスの姿は以前と変わらない。しかし内包している魔力は人間の桁を超えている。あれはもう、怪物だ。
「だとしたら、もう手遅れじゃないか?
もはや彼女は肉に呑まれた。助かる道はない。」
「いや、まだ呑まれてない。まだ、残ってるよ。」
まだ琴葉の存命を、フツノが教えてくれている。琴葉の魂は、健在だ。
その言葉に、カオスは顔をしかめる。
「そういえば、彼女は何者なんだ?見たところ何の神秘も持たない只の少女だ?いくらその刀の加護にも限度がある。」
それは、俺も知りたい。最初は俺の記憶操作すら破ったのだ。いくらフツノの護りでも、もう限界だろう。
もしかして、遺伝的にそういう力を持っているのかもしれない。
しかし、そんな考察は後回しだ。今は目の前の敵に集中しないといけない。
「消えてもらうよ、混沌の魔術師。琴葉を待たせたくない。」
フツノを振るう為に振りかぶる。その長さ故に攻撃手段は限られるが、避けられないなら問題ない。
「やってみろ、黒の魔術師。お前を殺してやる。殺して、最強を証明するっ!!」
肉の床から現れる無数のフランベルジュ。その一本を抜いて構える。
覚悟を決めて、床を蹴った。
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