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完全な暗闇の中に、ダリアは立っていた。明かりはない。
『つまり、それが事件の全貌かね?』
「はい。今回の事件は混沌の魔術師と、槍の錬金術師の二人が首謀者でした。
目的はあの街に封じられていた『ヒルコ』の解放、そして黒の魔術師の殺害だったようです。」
実はダリアは、こういう仕事は好きじゃない。書類にまとめた事を、最初から説明するのは面倒だと思っていた。
『そんな事はどうでもいい。それよりも問題は真理の扉だ。』
「それは優・・・いえ、黒の魔術師の働きで事無きを得ました。」
『違う。我々は真理に至った魔術師を失ったのだぞ?これは大きな損失だ。』
『何を言う。万が一奴らが現れれば、地図から街が一つ消えていたのだぞ?』
複数の老人の声が、言い争う。この声の主は、魔術協会のトップに君臨する五人の老人だ。ちなみにダリアはかなり嫌っている。
やがて、老人とは明らかに違う、幼い少女の声が響いた。
『はいはい、馬鹿な真似はそこまで。これじゃあ何時までも終わらないじゃない。』
いつの間にか、ダリアの前には一人の少女が立っていた。十歳程度の姿だが、何処か威厳があった。
「・・・続けてくれる?」
「はい、先生。」
そう、彼女こそがダリア、そして優の師にあたる人物なのだ。
幼い容姿に騙されてはいけない。彼女程の魔術師ならば、姿を変える程度は簡単なのだ。
だから実際の年齢は・・・
「何故かな、この携帯電話を破壊したくなってきたよ。」
ヒィィィッ!!何も言いませんっ!!
「とりあえず、残った問題ですが・・・」
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