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びっしりと書かれた宣戦布告の文章は、帝国の貴族の連名で閉じられている。
総勢百名ほどのその名前を上から追うアレン。
程なくして、呼び出された理由を知ることになる。
「…………そ、そんな……なにかの間違いでしょう!?」
「……アレン君、落ち着いてくれ。」
「て、帝国がこっちを混乱させるために書いたでたらめですよ!こんなの!」
テーブルに乗せられた羊皮紙を叩き、叫びをあげる。
「………名前の横に押された家紋は……間違いなく本物だ。………わかるだろう、ミス・ヴェストロン?」
名前を呼ばれても反応できないエリア。
ただわなわなと震えながら涙を流していた。
「………どういうことですか……なんで………」
「私にも状況はよくわからない。だが、1つ確かなことは………」
愕然とするアレンを落ち着けるように静かに口を開くクルーメンス。
「………ドーア君が………敵国の将となったことだ。」
ドーア・ハイン・ラ・ヴェストロン。
ヴェストロン領の現領主で、エリアの実の父親。
学園最強の称号を付けられ、勉学、魔法においても首席、戦争でも数多くの手柄を立て、領主、大臣補佐の両任を立派に務めた上流貴族。
また、幼くして母親のイザベラを亡くしたエリアたちを男手一つで育て上げた父親である。
しかし、帝国との関係を悪化させる外政に疑念を抱き、直属の大臣に進言してから行方不明となっていた。
「………私も彼のことは教え子として知っている。体も精神も強靭な、国を支える力となりそうな人間だった。」
アレンもドーアには世話になっている。
その温和な人柄を知っているアレンは真っ向から否定をしようとした。
「……わかりません。ドーアさんはそんなこと………するはずが――」
「アレン、もう……いい。」
黙って泣いていたエリアがアレンを制する。
「……どういう意味だ?」
「………お父様は……お父様の考えに、従って、動いた。それ、だけよっ………」
呼吸さえも苦しそうなエリアが言葉を搾る。
「……私は、………ヴェストロン領の………次代領主……なのよっ!お父様はもう………敵になった。それだけ。私には私の………やることがある。」
「辛いだろうが……それが現実なんだ。」
歯を食いしばるアレン。
貴族の考えはさっぱりわからない。
泣きながらでも父親と決別を誓ったエリアのことも理解できなかった。
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