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男は疲れた表情で煙草を取り出し、火をつける。
「……ま、どっちにしろ秘密裏に俺たちが追うことになるんだろうけどな。」
「だったら、ここで連れ戻してさしあげた方が……」
ステラは男を見て言葉を飲む。
男の表情は楽しそうに微笑んでいた。
「……この国は腐ってる。もう手遅れなまでにな。」
「なっ、一体何を!」
「お前もそう感じたから、囚人の食事に解毒剤なんか仕込んでたんだろ?」
「それは………」
「違うのか?だったら追い掛けろよ。もう見えなくなるぞ?」
4人の姿は夜の闇に溶けるようになくなっていく。
ステラが黙り込むのを見て、男はその肩を叩く。
「この国が生き残るかどうかは、あの子供たちの物語だ。俺たちはその舞台で踊る、役者に過ぎない。せいぜい与えられた役を演じようぜ。」
男は短くなった煙草を投げ捨て、足で火を揉み消す。
「………私は、何があっても閣下を信じます。」
「……そうかい。」
男は残念そうに肩を竦め、歩き出す。
ただし、4人とは真逆の城の方向へ。
ステラは一度闇の向こうを見据え、その後を追った。
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