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学園に通う生徒は、例外なく寮へ入ることになる。
ゼリアルの中心に広大な土地を持つ学園、その内部に建設された学生寮の前、集合した4人は校門をくぐった。
「まだお昼には早いね。どこかで時間潰そう?」
「本屋さんでも寄りますか?」
「うん、いいね。」
楽しげなのはアメリアとミーア。
境遇も立場も全く違う2人だが、知り合ってからとても親しくなっている。
その後ろをアレンが歩き、さらに後ろをエリアがついて来ていた。
「ねぇ、アレン。」
「ん?」
エリアが前の2人に聞こえない程度の声で呼ぶ。
「あの人、まだ頭の中にいるの?」
「………みたいだな。さっきも声が聞こえてきた。」
今アレンの状況を知っているのはエリアのみ。
先日、エリアはランスロットの宿ったアレンと会話をしていた。
「……なんて言ってるの?」
「感謝しろーだの俺は伝説だーだの言ってるよ。」
『そう、俺は伝説の騎士なんだぞ!敬意を払え!』
再び響く声に顔をしかめる。
エリアは少し考え、心配そうにアレンを見上げた。
「……学長様に相談すべきだと思う。あの時のあんた、普通じゃなかったもん。」
「まあ、そうなんだけどな………」
前方で楽しそうに会話する2人。
慌てても事態は好転しそうにない、と思っていた。
「心配は受け取っとくよ。ありがとな。」
「……と、隣に変人がいるのが嫌なだけよ!」
エリアは何故か怒ったように足を速めた。
わからないやつだなぁ……
アレンは首を傾げながらその小さな後ろ姿を追った。
4人はしばらくぶりに街を散策し、目的の店へ入った。
最近オープンしたばかりの、少々敷居の高いレストラン。
貴族が多いこのゼリアルだからできる商売だった。
「……たっけー……なんでスープが50ガルもするんだ?」
「ちょっと、みっともないからそういうことは言わないでよ!」
「だって……50ガルだぞ?だったら漫画5冊買った方がいいと思うけど……」
「ご注文はお決まりですか~?」
現れたウェイトレスにアレンは固まる。
綺麗な金髪を後ろで一本にまとめ、メイド服のような制服を身につけ、何より……
……む、胸でけぇ………
制服の下で窮屈そうな胸元に目が行ってしまう。
そんなアレンの様子に気づいたエリアが自分の胸を見、ウェイトレスを見て、再び自分に視線を戻し……
「ふんっ!」
「いってぇ!!」
思い切りアレンの足を踏ん付けた。
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