序章

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結局アレンは見栄を張ってステーキやらパンやら、漫画5冊分のスープやら、豪快に注文し、盛大に後悔した。 ほぼ底無しに財産のあるエリアやアメリアとは違い、平民であるアレンにはこの出費は相当痛い。 ミーアは計画的に少食に抑え、それでも満足そうに食事を終えた。 「……はぁ、冬が来たなあ………」 「財布にも外にもね。まあたまにはこうやってパーッと使うのもいいでしょ!」 落ち込むアレンを元気づけるアメリア。 一行は再び街をぶらつき、夕方頃に寮へ戻ってきた。 「あ、見つけた!アレン!」 「……おお、ヴァイス………」 茶髪で小柄な生徒、ヴァイスがアレンに駆け寄る。 容姿も声も可愛いらしい彼は、今まで数え切れないほど女子生徒に間違えられてきた。 そんな姿とは裏腹に、秘めた魔力はとても強大で、アレンが斬った巨大ゴーレムを作ったのも彼である。 その時はゴーレムを作って気絶してしまったのだが。 そんな鈴のような声でアレンを呼んだヴァイスだが、アレンの様子に首を傾げる。 「ど、どうかしたんですか……?」 「ちょっと冬を体感しただけよ。で、どうしたの?」 アメリアが苦笑しながら代わりに応答する。 「さっきロアン先生が探してました。エリアさんも。」 「私も?」 不思議そうなエリア。 勉学において常に上位に君臨するエリアは、呼び出しを食らったことなどほとんどない。 「2人とも学長室に呼び出しです。」 「わかった、ありがとう。」 「いえいえ。」 優しく微笑み、ヴァイスが駆けていく。 校門の外に待ち人がいるらしい。 「……じゃ、私たちはここで。」 「そうね。じゃあまた。」 アメリアとミーアが寮へ入っていく。 「……アレン!」 「……!?どうした?」 「聞いてなかったの?呼び出しよ!よ・び・だ・し!学長室に行くの!」 「ああ、そうか。気をつけてな。」 「あんたも行くの!」 虚ろなアレンの胸を叩き、エリアがやや怒った口調で続ける。 「男なんだからウジウジしない!ほらっ!」 エリアに背中を押され、アレンは学長室のある東塔まで歩いた。
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