1章~貴族の子~

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  「はぁ……はぁ……」 屋敷を走り回り、疲れた肩を上下に揺らし、オリジンは庭園の花畑の前に腰を降ろしていた。 この広い庭には、季節に合わせ、色とりどりの花が咲いている。 ツバキが花を植えた花壇も、目の前にある。 「勉強なんて無理だぜー」 そんな独白は透き通る空に吸い込まれ、風の音にかきけされる。 使用人たちは皆屋敷の中にいるのか、人の姿は見えない。 オリジンは勉強がからっきしだった。しかも大嫌いなのである。 なんで勉強しなければいいのか、わからなかった。 なんで立派にならなければいけないのか、わからなかった。 ツバキが一生懸命言っている事を、理解しようとしなかった。 「だぁー」 芝生に寝転がり、どこまでも深い青を見る。 視界をゆっくり通りすぎる雲を見る。 「あ、あの雲、父さんにそっくりだぜ」 ぼんやりと浮かぶ雲が、何となく父親に見えた。 .
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