1章~貴族の子~

9/37
前へ
/103ページ
次へ
  「さて、そろそろ戻るかな……」 起き上がり、屋敷の方に視線を向ける。  今頃ツバキは、逃げ出した僕様を探しているのだろう。 そう思った。 オリジンは一歩前に踏み出した。 ぞくり。 しかしそこで、背後に気配を感じる。 ――視線というよりは、殺気に近い。 びりびりと、背中に衝撃が走る。 オリジンは急いで上半身を回し、後ろを向いた。 「なっ……あんた、誰だぜ?」 そこにいたのは、見知らぬ男だった。 ぼろぼろの衣服から、筋肉の鎧に包まれた腕がのぞく。 そしてその手には、無骨なナイフが握られていた。 男は無口のまま、オリジンを観察している。 「ていうか、おまえ、どうやってここに入っただぜ!?」 確か門番が何人もいたはずだ。 この庭園は、部外者がおいそれと入れるような場所ではないのだ。 .
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加