1章~貴族の子~

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  オリジンは後退しようとしたが、踏み止まる。 一刻も早く逃げなければならないのだけれど、どうしても眼前の許せない行為を見逃すわけにはいかなかった。 男が踏み付けた花壇の花は、ツバキが毎日手入れをしているものだったのだ。 「おい、その汚らしい足をどけろだぜ!」 自分でも馬鹿だと思う。 そんな事より自身の命を優先させなければと思う。 それでも、目の前の男の行為は許し難かった。 「それはツバキが一生懸命育て上げた花なんだぜ。ツバキの、大事なものなんだ!」 そう叫ぶも、男は関係なしにずかずか歩いてくる。 可憐に咲く花々を踏み散らかして。 足が震え、額からは汗が流れる。 心臓をわしづかみにされたような戦慄が、身体を襲う。 「馬鹿なガキだ……」 男はオリジンののど元に、ナイフを突き付けた。 冷たい感覚と恐怖とが混じり合い、声が出せない。 がたがたと、凍えるように身体が揺れた。 .
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