プロローグ~白銀の情景~

2/2
前へ
/103ページ
次へ
  少女の瞳に映るのは真っ白な情景。 澄んだ気温がほおを撫でつけ、ひんやりとした感覚が意識を鮮明にさせる。 「なん……で?」 目を見開く彼女が見たのは、氷の世界だった。 前も後ろも右も左も全て、淡い結晶を生やしている。 少女以外の全てのものが息を潜め、動作を停止していた。 氷河期の時代にやってきたかのような、錯覚。 「いや……違う。私のせいじゃない……私は……」 白く濁った吐息が、現れては消える。 周りは冷えきっているが、体温は燃えるように熱い。 のどが渇く。 絶望に焦がれる。 氷の造形は少女を恨めしそうに、恐怖しながら見つめていた。 まるで人外の化け物を見つめるような、ただただ畏怖を貼り付けたような目で。 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」 ひざをつき、頭を抱えてがたがたと震える。 そして謝罪の言葉を何度も、それこそ狂ったかのように繰り返した。 この惨状を引き起こしたのが自分であることは、明白だったのだ。 だけどそんな事、望んではいなかった。 彼女が氷の世界に変えてしまったのは、自分のクラスだった。            ・・ 机も黒板も窓も、そして生徒さえも――。 彼女はその禁忌に近しい魔法で、周りの全部を呑み込んでしまったのだ。 .
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加