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少女の瞳に映るのは真っ白な情景。
澄んだ気温がほおを撫でつけ、ひんやりとした感覚が意識を鮮明にさせる。
「なん……で?」
目を見開く彼女が見たのは、氷の世界だった。
前も後ろも右も左も全て、淡い結晶を生やしている。
少女以外の全てのものが息を潜め、動作を停止していた。
氷河期の時代にやってきたかのような、錯覚。
「いや……違う。私のせいじゃない……私は……」
白く濁った吐息が、現れては消える。
周りは冷えきっているが、体温は燃えるように熱い。
のどが渇く。
絶望に焦がれる。
氷の造形は少女を恨めしそうに、恐怖しながら見つめていた。
まるで人外の化け物を見つめるような、ただただ畏怖を貼り付けたような目で。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
ひざをつき、頭を抱えてがたがたと震える。
そして謝罪の言葉を何度も、それこそ狂ったかのように繰り返した。
この惨状を引き起こしたのが自分であることは、明白だったのだ。
だけどそんな事、望んではいなかった。
彼女が氷の世界に変えてしまったのは、自分のクラスだった。
・・
机も黒板も窓も、そして生徒さえも――。
彼女はその禁忌に近しい魔法で、周りの全部を呑み込んでしまったのだ。
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