1章~貴族の子~

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  「あ、そうだ!」 思い出したように、急にオリジンは声を上げる。 「どうしたんですか?」 訝(いぶか)しそうな表情を浮かべるツバキ。 そんな事には意も介さず、オリジンは机の引き出しから、銀色のネックレスを取り出した。 「これは?」 そのネックレスを受け取るツバキは、不思議そうに首をかしげる。 「ツバキ先生、この屋敷に来てから五年経つだぜ。だからその記念のプレゼント」 オリジンはにっこりと、人懐こそうに笑う。 「……そう、ありがとう。本当に嬉しいです」 微笑みを浮かべた表情は、満足そうだった。 そのプレゼントが本当に、感動するほど嬉しかったのだ。 「じゃあ、今日の勉強は終わりにしてくれだぜ」 「いけません。それとこれとは話が別です」 「ちぇー」 オリジンは悔しそうに、くちびるをつぼめるのだった。 そんなオリジンを愛しそうに見つめながら、自分のこれまでについて考えた。 ――そうか、もう五年も経つのですね。 ツバキは懐かしむように、部屋の中をぼんやり眺めていた。 .
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