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「近藤さぁーん」
現れた近藤に、沖田は作業を放り出して飛び付いた。
「局長、おはようございます」と、隊士らの声も続く。
「皆、稽古ご苦労様。総司も一緒とは珍しいな」
「えへへ。今日は和葉さんも来ているんですよ」
近藤から頭を撫でられて幸せそうに言う沖田。
「おぉ、和葉君も来ておったのか。挨拶が遅れてすまん」
「そんな、別に構いませんよ。おはようございます」
腰の低い近藤に、和葉は思わず立ち上がる。
「君とは祇園祭以来かな」
「そうですね。ご無沙汰です」
ぺこりと頭を下げると、肩を叩かれた。
「今から大切な会議があってな……申し訳ないが、総司を借りてゆくぞ」
「自分まだ……一本しか」
少し悲しげに言う和葉に、沖田も取り繕う。
「すみませんね。私も貴方と稽古出来なくて残念です」
「おい、目が笑ってる。言ってる事と表情が真逆だ。そんなに自分と稽古が嫌いか!」
食っ掛かろうとする和葉に、沖田から未完成の竹刀を渡される。
「続きは他の隊士さんに頼んで下さい。後、これもお願いします」
「……あ、はい」
ニコニコと言うと近藤と共に去ってゆく。仕方なく返事をして見送っていると、不意に沖田が振り向いた。
「言い忘れていました」
「何を?」
「また強くなりましたね。二回目の突きは私でも危うかったです。ただ、無闇に動くのではなく、相手の動きを読む事が今後の課題ですね」
稽古への関心はない、嫌いだ、そう言いながらも沖田はしっかり和葉を見ていてくれる。
心なしか和葉は照れた。
「ご教授有り難うございました」
「いえいえ」
そして、二人は道場から出て行った。
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