1. 物語ハ再ビ

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  実は和葉、人並み外れて器用であった。裁縫や料理、その見た目からは想像もつかない特技を持っている。 「他に修繕したい竹刀ありますか?」 その為か初めてとは思えない程、器用に竹刀に弦を結ぶ和葉。鼻唄まで歌い出しそうな勢いだ。 隊士らも自分の竹刀を差し出す。何とも道場内とは思えない穏やかさだった。 「……器用でござるな」 スッと和葉の横に腰を降ろした一人が、呟いた。 「まぁ、これでも下男だから……細かい作業は本業だ――って、斎藤!?」 チラリと横目で見遣った和葉は、ふてぶてしい横顔に素っ頓狂な声を出した。 「……ん?」 「いつの間に。ってか、今まで何処に?」 「拙者はずっと道場に居たでござるが」 素っ気なく答える斎藤は、和葉の器用な指から目を離さない。 「ある意味凄い存在感だな……斎藤の竹刀も修繕しようか?」 和葉が苦く笑うと、斎藤は首を振る。 「天丼美味かったでござるよ」 「…………」 脈絡のない返事に和葉はポカンと口を開く。 「あぁ、教えてやった奴か……お前さぁ、もう少し会話の流れを……」 「すっかり秋でござるな」 (無視かっ!) 初対面の時から変わらぬ斎藤の持つ空気には、随分と慣れたはずだが、和葉は溜息をつく。 道場から見える空は、高く晴れ渡っていた。 「斎藤、お前は会議に出なくて良いのか?」 「ん。近藤殿からは朝餉で聞いたのでな……」 僅かに眉を寄せた斎藤に、和葉は問うた。 「何の話なんだ?」 「…………秋の嵐でござるよ」 斎藤は垂れた前髪をかき上げると、そう囁いた。  
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