1. 物語ハ再ビ

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  沖田の勘は総じて当たる。 玄関門に到着した沖田が最初に見たのは、先程の憐れな団子よろしく地面に伸びた二人の隊士だった。 顔中に痣をこしらえた隊士らに意識がないのは、言うまでもない。 (遅かったですか) 思わず苦笑した沖田。前に向き直れば、次に宙に浮く隊士が見えた。 片腕で胸倉を掴まれた姿は情けなく、バタバタと手足を動かし抵抗するも効果はない。 「だから侵入者じゃない!」 ドスンッ! 凜と張った声がしたと思えば、大の大人が物の見事に地面へと投げられる。 川の字の如く綺麗に倒れ込む三人を一瞥し、沖田はそっと彼らを飛び越えた。 腕を組み仁王立ちになる背中は余りに華奢で、とても今の状況とは結び付きそうもない。 「和葉さん」 そう呼べば、直ぐに振り向く仏頂面。 不機嫌そうに尖った口元、少し紅い頬、濁りなき漆黒の大きな瞳、その顔を見て沖田は最高の笑顔を送った。 「あ……沖田さん」 肩に付くか付かないかの短髪が風に揺れ、左手の赤い風車もくるりと廻る。 「随分と派手にさないましたね」 「……丸腰で妥協したんだ、いいだろ?」 悪びれもしない声に、沖田は肩を竦めた。 「しかも、片腕ですか。その細い腕にどれだけの力があるんでしょうね?」 「煩いっ! だって、こいつら自分が来たのに、やれ侵入者やれ敵だ、ってグダグダ言いやがるから……――あっ」 短く叫んだと思えば、突然その場にしゃがみ込む。  
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