18.恋焦ガレテ

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  だからこそ、山南と誓った約束をより一層強く思い出すのだ。 「ただ私は、彼女の傍に居てあげたいだけなんです」 「…………」 「私には何も出来ないですが、彼女が笑う時も泣く時も、横で共に笑い、その涙を拭い、見守ってやりたい」 永遠は誓えない、だが、この身が続く限り、心を捧げよう。 強がりで、頑固で、そして寂しがり屋な愛おしい彼女を見守る存在であろう。 「昔、とても敬愛していた山南さんという方と約束したんです。逝く時まで彼女の傍に在る、と。彼女が自身を見失わぬよう、自身の存在を否定せぬよう、と……」 かつて沖田の和葉への想いを山南に語った夜、彼は言った。 『彼女の生きる“意味”でありなさい』と。 それは山南が死んでも尚、強く強く沖田の心を繋ぐ。 「私は、強く生きたいと願う彼女の意味となり、傍に居ると誓います。和葉さんを決して独りにはしない」 人はどうすれば、こんなにも優しく切ない“愛”を抱けるのだろう。 若葉は、沖田の儚くそして幸せそうな表情に息を飲んだ。 鬼神と呼ばれ、人斬りと蔑まれ、そんな彼を何がここまでするのだろう。 ある意味では怖い程に。 清々しい程に純粋で。 若葉は思った。 もう、大丈夫だ――と。 和葉にとって彼の存在は大きく、沖田にとっても彼女の存在は大きい。 出る幕はないのだと、ひしひし痛い程に気付かされた。 和葉はきっと生きる事に二度と迷いはしないだろう。 「いつから? いつから和を想ってくれてたん?」 すっかり夜となる町。 島原の華やかな提灯の明かりが、部屋を薄く照らし出す。 「最初から、です」 沖田は今度はしっかりと若葉を見つめると微笑んだ。 「きっと、最初から好きでした。私は初めて彼女に出逢った時から、和葉さんが好きです」 迷う事なく戸惑う事なく、想いは溢れる。己の感情を言葉にしてやっと理解する。 満たされる気がした。 沖田自身足りないと感じていた、昔、得る事のなかった感情。 「ずっと、恋焦がれています」 気付いた今、沖田は心から和葉を愛おしいと感じた。 そんな秋の夜の事――…  
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