19.交差スル誓

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  (そこには触れてはいけないのか……) わざわざ会ったばかりの者の事情など追求しようとは思わない。和葉は違和感を胸に仕舞う。 「お言葉に甘えて……と言いたい所だが、自分色々と仕事もあるし。その筑前煮も味見したので腹も減ってない。気を遣わないで下さい」 京独特の社交辞令に下手に乗れば後々大変である、和葉は経験から知っていた。 軽く身を引こうとするも、またもや男に肩を掴まれる。 「何を言っとるぜよ! こんに痩せて、もっと食わんと骨と皮だけになってしまうきぃ」 男は比較的筋肉質で、和葉との体格差は明確だ。身体に触れていれば秘密がばれてしまう、和葉が手を払い退けようとした時、男はぴくりと肩を震わせた。 「……え?」 すると、突然男は和葉に顔を寄せた。細目ではあるが近付く顔は迫力があり、和葉は鼻先が触れそうな距離になっても動けない。 「お、お前……自分にはそういう趣味は、ない、から――」 「見付けたぜよ!!」 これまた唐突な男の叫び声。 耳元で言われた事で和葉が怯んだ隙に、和葉の身体がふわりと浮き上がった。 言うまでもない。男に横抱きにされているのだ。 「いや、止めろっ! は、離せ馬鹿馬鹿! 自分は男に興味はねぇからっ」 激しく男の腕で暴れてみるも、上手くいかない。 「才谷はん! 何やってはるんどす」 流石に登勢も見兼ねて割り込んでくる。それでも男は和葉を離そうとはせず、瞳を輝かせた。 「お登勢殿、昼餉は要らんぜよ。大事な用じゃき、部屋には誰も近寄らんよう手配してつかぁさい」 「は、はぁ……」 男は手早く伝えたと思うと、部屋を飛び出した。抵抗虚しく和葉には拒否権はないようだ。 (この男、一体……知り合いではないはずだが) すっかり抵抗を諦めた和葉は、腕の中で揺れながら思考を巡らせる。男は廊下を走り、二階への階段を駆け登り、瞬く間に二人は一番奥の部屋に到着した。 「お前、一体何のつもりだ!」 抱き上げられた時とは打って変わり、丁寧に降ろされた和葉。男を見上げて睨むと、そう吐き出した。  
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