1. 物語ハ再ビ

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  肌で直接痛みを感じているだけにヒィ、と声を上げる隊士ら。そこへ沖田は微笑みと共に留めを刺した。 「ちなみに池田屋事変で、かの有名な“吉田 稔麿”を倒したのも、この方ですよ」 瞬間、隊士の顔が恐怖に歪み青ざめる。 「な、ななな……あの吉田を?」 「……まさか」 言葉ではそう言うが、隊士らは和葉から退いてゆく。 まるで化け物を見るような顔に、和葉の口角がほんの少し上がった。たが、直ぐさま真顔で沖田に向き直る。 「沖田さん、もうその話はいいでしょ。終わった事だから」 その瞳が刹那曇った気がした。 「すみません……本当に」 沖田は慌てて謝ると唇を噛んだ。そぶりは見せないが、和葉にとって池田屋事変は禁句なのかもしれない。 「浅はかでした……ね」 「もう、いいって! それより今日の道場稽古の隊は?」 「三番隊と一番隊ですよ」 気持ちを切り替えて沖田が答えると、和葉は人差し指を顎に添えて思案する。 「ふーん、斎藤と……って、沖田さんじゃないかっ!」 「そうですよ。じゃあ頑張って下さいね。応援してま――」 笑顔で手を振る沖田の首根っこを間髪入れず掴む和葉。 「待て待て待て! “じゃあ”じゃないだろうが。組長だろうと稽古には参加しねぇと駄目だ!」 「えぇー、私これから近藤さんと囲碁の約束があるんです」 「馬鹿かっ」 パチン、言うや否や沖田の頭に和葉の手刀が落ちる。勿論、本気ではないが。            . . 「お前は仮にも自分の師匠なんだ! 怠けるなんざ言語道断」 鋭く睨みを入れると、和葉は沖田に言い放つのだった。  
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