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「えーっ!まだ眠ーい…
あっ!そうだ!新しい詩を書いたの。見てくれる?イツキ」
「また書いたの?僕まだ前の詩に曲つけてないけど…」
「いいの!とにかく見て」
―――うん、
イチルが入院したのは…丁度一年前くらいかな。急に職場で倒れたんだ。
イチルの仕事は接客業で、毎日夜遅くに帰ってきてはベッドに倒れ込むような生活を送っていた。
心労と疲労がたたったんだと思う。
そんなイチルが入院してから始めたことは、詩を作ること。
その詩にメロディをつけるのが僕の役目。
あまり遠くに行けないイチルに、僕がしてあげられる唯一のことだった。
「綺麗な詩だね。イチルの作るものは全部キラキラして見えるよ」
「あら、そんなこと言ったって何も出ないわよ?」
「本当だってば!」
イチルは何がおかしかったのか、クスクスと笑っている。
「うふふっ、冗談よ。ありがとうイツキ」
そう言うと、イチルは整った顔をクシャッとゆがめて笑った。
片目を少し瞑り気味に笑う癖。
僕はイチルのこの癖がたまらなく好きだ。
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