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「…冗談だよ」
その言葉を聞くと、パッと頭を上げて微笑ん…いや、微笑みかけたが、また泣きそうな顔に戻ってしまった。
「どうしたの?」
「本当に好き?愛してる?」
「好きだし、愛してるよ」
「じゃあギュってして」
「…先生来るってば…」
「嫌、してくれないなら許さないんだから!」
こうなるとイチルはどうやっても動かない。
僕はため息をつきながら、イチルに近付いた。
イチルはベッドから身を乗り出すようにして僕の方を見ている。
「ちょっとだけだよ…ほら」
「わっ!」
ベッドに腰掛けたイチルの背中を引き寄せると、驚くほど簡単に腕の中に入った。
(イチル…また痩せてる…)
折れそうな、崩れそうな細い体をそっと抱きしめる。
それに応えるように、イチルの手もおずおずと僕の背にまわされた。
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