啓介

2/4
前へ
/51ページ
次へ
「お疲れ様。真樹ちゃん、今日空いてる?よかったら食事しない?」 そう誘うのは同じ部所で働く同期の啓介だ。入社当時から彼は真樹に好意を寄せており、よく誘ってくる。真樹も、そのことには薄々気付いていたため、敢えて断っていた。 「ごめん、今日は予定あるの。」 「あ、先約あった?」 「行くとこあるから。」 「この間もそう言ってたよね。もしかして、彼氏?」 「…違うけど。ちょっと最近気に入ってるお店があって。」 「そっか、何、どんなお店?教えてよ。」 ―もう、しつこいなぁ。あんまり言いたくないんだけど…。 真樹はためらいながらも"ef"の話をした。 「へぇ、そんなに真樹ちゃん気に入ってる店なら行ってみたいな。今日行くんでしょ、じゃあついていってもいいかな。」 「え、あ…。うん…いいけど。じゃあ19時に"ef"で。」 「じゃあ、また後で。」 これまで断り続けたこともあり、啓介の押しを断りきれず店で待ち合わせることになった。 19時。約束通り店に行くと、啓介はすでに一人カウンターに座っており、待っていた様子で真樹を見つけるや否や手を挙げた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

238人が本棚に入れています
本棚に追加