238人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れ様。真樹ちゃん、今日空いてる?よかったら食事しない?」
そう誘うのは同じ部所で働く同期の啓介だ。入社当時から彼は真樹に好意を寄せており、よく誘ってくる。真樹も、そのことには薄々気付いていたため、敢えて断っていた。
「ごめん、今日は予定あるの。」
「あ、先約あった?」
「行くとこあるから。」
「この間もそう言ってたよね。もしかして、彼氏?」
「…違うけど。ちょっと最近気に入ってるお店があって。」
「そっか、何、どんなお店?教えてよ。」
―もう、しつこいなぁ。あんまり言いたくないんだけど…。
真樹はためらいながらも"ef"の話をした。
「へぇ、そんなに真樹ちゃん気に入ってる店なら行ってみたいな。今日行くんでしょ、じゃあついていってもいいかな。」
「え、あ…。うん…いいけど。じゃあ19時に"ef"で。」
「じゃあ、また後で。」
これまで断り続けたこともあり、啓介の押しを断りきれず店で待ち合わせることになった。
19時。約束通り店に行くと、啓介はすでに一人カウンターに座っており、待っていた様子で真樹を見つけるや否や手を挙げた。
最初のコメントを投稿しよう!