真樹

2/3
238人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
蒸し暑い夏の日、突然の雨に走り出す真樹。 「もう、ちょっと何よー!」 ここはサラリーマンや若者達、大勢の人が行き交う街東京。毎日同じことを繰り返しながら、周りに構う暇など無い程にみな必死で生きている。 時刻は14時を回ったところで、信号待ちの間、ビルのスクリーンでは全国的に猛暑日になりそうだというニュースが流れていた。 ―猛暑で雨。…ほんと最悪。 真樹は取引先からの帰りに雨に降られ、ついてない1日だと思いながら会社に戻った。 彼女は地方の大学を卒業後、故郷を離れて上京してきた。大手企業を相手として成長を遂げてきた広告会社に就職が決まったのだ。彼女は広告マーケティング部に所属している。 「お疲れ。うわ、ひどい濡れ様だね。あ、取引先の反応どうだった?」 帰るや否や聞いてくるのは高杉部長だ。 「ダメですね。雑誌程度の売り込みじゃ納得できないって言ってます。うちのサイトと提携して売れ行きまで把握したいそうです。」 「それじゃあ今の契約料じゃ無理だな。あの担当者は厄介だからなぁ。すまないね、真樹くん。」 「そうですね、また別のプランを立てて交渉してみます。」 「ああ、頼むよ。」 ―はぁ、何で私があの会社の担当なのよ。 彼女はある取引先との交渉を任されていたが、その中でも取り分け厄介な相手を抱えていた。なかなか交渉に応じず、その割にはよくどうなっているのかと催促してくる。この日もまた、交渉は破談に終わった。 苦労の多い仕事ではあったが、広告の成果があったという声を聞けば報われる。真樹にとっては、やりがいのある仕事だった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!