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チリン…
軽やかな鈴の音が耳に心地いい。
入り口に"ef"と書かれた看板が目についた。
「へぇ、こんなお店があったなんて、雰囲気いいですね。先輩、よく来るんですか?」
「ここにはたまに来るんだけど、実は彼がお気に入りなのよ。」
そう言いながら、カウンターへ座った。
クスッと笑う美里が指差す方へ目をやると、一人のバーテンダーがグラスを磨いている。
少しグレーがかった軽く癖のついた柔らかそうな髪。スラッと伸びた背に黒いベストがよく似合う。
「美里先輩の好みって、ああいう感じなんですか?意外でした。」
「あら、年下の男の子って好きよ。うちの会社じゃあんな子絶対いないから。」
「うちにいるタイプじゃないですね。でもホストみたいで…、私は…ちょっと。」
「ホストが嫌って?偏見よそれ。私はホストでも何でもとにかく顔が命!」
「誠実さが大事だと思いますけど。」
しばらくの間、そんな笑い話をしながら店を眺めていた。
「いらっしゃいませ。」
バーテンダーが近づく。
「美里さん、今夜もいらしたんですね。この間みたいに酔って、ここで寝ないでくださいよ。タクシーで連れて帰るのは僕なんですから。」
「大丈夫、聖二の部屋に帰るから。」
二人はそんな冗談を交わしながら親しげに話し始めた。
彼の名は、聖二。この店で働いて1年程経つらしい。真樹よりも2つ年下だった。年下にしては大人びた口調で話し、ものおじしない雰囲気があるのはこの仕事のせいだろうか。
バーテンダーにとってはカクテルを作る事の他に、客の相手をするのも重要な仕事の一つだ。彼は常に気を配り、客のタイプに合わせて話題を変えているようだった。
―さすが、女の子はコロッと参っちゃうはずよね。確かにかっこいいけど…。
真樹はその容姿に惹かれながらも、この時はまだ、ただのバーテンとしか見ていなかった。
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