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一瞬思わず見とれてしまった永倉は、はっと我に返る。
〈おい、俺しっかりしろっ!
あいつはいくら女っぽくても“男”なんだぞっ!!
俺は断じて衆道ではない。
普通に女が好きだ〉
と、永倉は後悔して悠奈は男だと何度も自分に言い聞かせた。
「まあ、普通の人は襲われたくありませんよね」
沖田はというと、悠奈の言葉に苦笑いをしていたが、
「悠奈君の場合ここだけじゃなくて、町にいる時も襲われる危険がありますから、自分の身を守れるくらいは強くなった方がいいんですよ」
と、説得するように悠奈に言う。
自分が殺されるシーンを何回もリピートしていた悠奈がその説得で最初に思ったことは、
(幕末って怖いよぉ………。
嫌だ。もう、帰りたいよ……)
だった。
今にも泣きそうなほど怖がっている悠奈だったが、
(でも、鈴の音を探さないと帰れない…。
怖いけど、痛いのは嫌だけど、現代に帰るには自分の身くらい守れるようにならないと駄目だよね……。
それに、新撰組の天才剣士沖田総司に稽古をつけてもらえるんだ。
こんなことは普通は一生ない。
沖田さんはたまに怖いけど普段は優しいし…
大丈夫だ)
悠奈はどうしても後ろ向きになる思考を無理矢理にでも前向きにした。
今日だけでもういろいろありすぎて、少しでも前向きに考えないと生きていけないような気がしたからだ。
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