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永倉の言葉に、少し考えるそぶりを見せる沖田だったが、
「じゃあ、いっそのこと稽古を早めに終わらせて、斎藤さんも一緒に行くというのはどうでしょう?」
と、すぐに思いついたように言った。
(確か……斎藤さんって、あの、無口そうな人だよね……)
悠奈は先ほどの和室にいた斎藤の容姿を思いだしていた。
悠奈がそうやってボンヤリと考えている間も、沖田と永倉の会話はどんどん進む。
「でも、まだ稽古途中だろ?
総司と違って、真面目な斎藤さんが途中でやめるなんてことするかなぁ?」
「何ですか、永倉さん。
それじゃあ、私が全然真面目じゃないように聞こえますけど……」
不機嫌そうに言う沖田。
沖田の視線はジトリと永倉を睨んでいて、それに彼は少したじろいだ。
心の中では、
(総司が真面目だったところなんてほとんど見たことがねぇよ!)
というのが、永倉の本音だったが、口に出して言うと後が怖いので、
「総司と斎藤さんを比べたら斎藤さんの方が真面目という意味だよ。
決して総司が真面目じゃないって言っているわけじゃないぞ」
と、適当に永倉は誤魔化した。
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