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「斎藤さ~ん♪」
沖田はニコニコと微笑みを浮かべながら斎藤に駆け寄る。
声に気づいた斎藤はこちらを向いた。
表情は相変わらず暗そうで無表情だったが、沖田は斎藤が少し驚いているとわかった。
「何の用か?沖田殿」
斎藤の話し方は淡々としている。
その上、元来無口な上、感情を表に出すことも滅多にない。
そのせいか無口で愛想のない奴と誤解されている部分があるが、本当は感情を素直に表現するのが苦手なだけだと沖田はわかっていた。
「斎藤さん、毎回言ってますけど、私のことは総司と呼んで下さいよ」
「俺の方が年下だ。
目上の相手を呼び捨てにすることなど俺にはできぬ」
斎藤は真面目に言う。
沖田は、斎藤の頑固さに苦笑いをして、頬をポリポリと掻いた。
「して何の用だ、沖田殿。
貴殿がここに来るということは、それなりの用だと思うのだが……」
斎藤は少し難色の表情をしている。
滅多に道場に来ることがない沖田が自分を訪ねるためにここに来たのだ。
そのせいか厄介な用を押し付けられるかもしれないと思って、身構えていた斎藤だったが、
「さすが斎藤さん。話が早いですね。
一緒にご飯食べにいきません?」
沖田はそんな斎藤の心中に気づかずさらりと言った。
「は?」
斎藤は予想していた内容とはあまりも違う内容に思わず拍子抜けした間抜けな声を出してしまった。
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