稽古

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「小姓ということは、あんたもしかして男なのかい!?」 ふねが身を乗り出すように聞いてくる。 悠奈はふねの雰囲気に完全に圧され、無言で何回も首を縦に振った。 ふねは悠奈を頭の先から爪先までじっくりと食い入るように眺めた。 悠奈がふと、こんなに見つめられたら穴が空いちゃうよ……と冗談で思っていた時にふねは、 「よく見れば着流しを着てるねぇ。 顔があまりにも別嬪さんだったから気づかなかったよ。 ごめんね」 と、そう言って、申し訳なさそうに謝った。 (いくらお世辞でも、別嬪って……それって女の人に使う言葉だよ……。 こんなお世辞を言わなくても正直に不細工だって言ってくれればいいのに……。 それにこんな風に謝られたら逆に虚しい……) 悠奈はまだ、自分が不細工だと勘違いしていた。 その上、謝られたらことでさらに微妙な気分になっている。 しかし、一応相手が謝った上に本当に申し訳なさそうにしているのでそんなことを言うわけにもいかず、悠奈は無理に笑みらしきものを作って、 「……お、お気になさらずに……」 と、言った。 ,
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